水になるブログ

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思ったよりも深刻だった中国経済

 今年の初め、市場ではコロナ後の中国経済回復の予想が主流でしたが、第一四半期が終わって雲行きが変わってきました。中国経済の停滞は思っていたよりも深刻だった。それをもっとも強く実感しているのはそこに暮らして経済活動をしている人民だと思いますが、市場も今になって2023年の見通しが楽観的だったことに気づいているようです。ここに紹介する記事は中国経済の現状をわかりやすく伝えてくれています。

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 去る6月のある日、深圳に住む一人の男性(David Yu)がUS$8,000をもって香港に入境した。厳しい資本制限を設けている中国ではUS$5,000までが無申告で持ち出せる外貨上限で、Davidの行為はリスクが高い。FRBが度重なる利上げを実施した結果、ドルペッグをとっている香港の金利も上がっており、Davidにとってはまたとないチャンスと判断しリスクを冒しても香港の銀行に預金することに決めた。重要なことは、資産を海外に逃がすことが彼にとっては急務だ。

 

「中国経済の不安定性が高まっているので資産を国外に移した方が安全だという空気がある。」

 

 DavidがHSBC銀行に着くと、彼と同様USドル資産を預けようとする北京語を話す人々が並んでおり、彼は預金を実行するのに40分ほど待たなければならなかった。同じことを考えている人はほかにも少なくないのだ。

 中国経済の先行きに対する見通しは急速に悲観的になっている。第一四半期の経済成長が4.5%と報告され、コロナ後の回復は泡と消えたように見える。李強首相は6月17日のリリースで第二四半期の中国経済成長ペースは速まると述べているが、専門家は前年同期が悪かったので実質的な成長ではなく(単なる比較上の)成長率の増加に過ぎないとみている。

 多くのグローバル投資銀行が第二四半期の経済成長予測を下方修正した。第一四半期の前期比成長率は2.2%だったが、第二四半期は当初平均4%から1%あるいはそれ以下とした。

 元の切り下げも悲観的な見方を加速する。第二四半期に入って元はUSドルに対して5.7%下がった。専門家は中国の通貨は今後より大きなプレッシャーにさらされるとみている。というのも、ここのところアメリカの各種統計はアメリカ経済が想定していたよりも強いことを示しており、さらなる利上げ圧力となる一方で経済回復がおぼつかない状況で人民銀行のさらなる金融緩和が予想されている。

(中略)

 4月に入って製造業セクターは縮小に転じ、サービス業セクターは減速し始めた。スタンダードチャータード銀行のエコノミストであるDing Shaungによると、家計も企業も消費や投資に資金を振り向ける余力はあるのだが将来にわたって安定した収入が見込めるという自信がない。政府はなにかにつけて民間の自信を取り戻すべく政策を掲げるが、企業は依然として長期の計画や投資に対しては消極的だ。

 

「国有企業と比べて民間企業が公平に扱われているかについては疑問がある。また三年に及んだ厳格な疫病管理対策は未だに投資の意思決定に影を落としている」とDingは述べている。

 

 今年に入ってから五か月で、全投資の55%を占める民間部門の投資は0.1%減少したのに対して全投資の成長は4%で、国有企業は8.4%増であった。

 先月、停滞する経済を活性化させるため、人民銀行は一年物ローン優遇金利(対企業中期貸出基準金利)を3.55%に、五年物金利(住宅ローン基準金利)も4.2%に引き下げた。

しかしDing氏によるとこうした金利引き下げも無駄なことであり、金利はすでに充分に下がっている。

 

「問題は民間企業の資金調達コストが高すぎるとか、融資を受けられない、といったことではない」

 

 五月に若者の失業率が史上最悪の20.8%を記録し、中国の職探しはここ数十年でもっとも困難な状況に直面している。都市部での全体的な失業率は先月も5.2%に留まっているが、さまざまな業種で解雇や給与削減が数多く報告されている。

 高まる不安によって家計は支出を減らし、住宅ローンを繰り上げ返済し、低利にもかかわらず不測の事態に備えて貯蓄に励んでいる、と前中央銀行統計局長のSheng Songchengは述べている。

 

「いざというときのための預金にとって重要なことは安全性と利便性であって利子が高いかどうかではない」

「ということで金利引き下げは預金の取り崩しには寄与せず、消費喚起策としての目的を果たすことは難しい。それどころか人々がさらに預金を増やすことを促すことになるかもしれない」

 

 2020年から2022年は毎年中国の経済成長の五分の一を占めていた輸出部門の今年の見通しはさらに悲観的だ。アメリカとの地政学的緊張と世界的な需要減退がその背景にある。

 

「本来元安は輸出にとって有利な材料となるはずだが、それもアメリカの生産拠点自国回帰(reshoring)や需要減退を前にしてはこの限りではない」と、ある江蘇省の海運業者は言う。

 

 Nomuraの中国エコノミストであるLu Tingによると市場は不動産市況の悪化や地政学的緊張の高まりによる影響を過小評価してきた。

 

「外部要因を短期間に改善することは困難なので、政府は不動産部門を経済の柱として引き続き支援する必要がある」

 

 2021年に政府が債務上限などの規制を徹底する以前、不動産部門は中国のGDPの四分の一を占めていた。不動産は年度会計にとってもっとも重要な歳入源であり、都市部の家計にとって最大の資産である。

 政府は民間の投資、消費が減少する現状、支出を増やすべきだが同時に財政に苦慮している。政府は民間部門に過度に干渉することなく、これ以上非効率な債務を積み上げることを避けなければならない。

 

Be water, my friend.