水になるブログ

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中国の不動産市場崩壊

 中国の不動産市場はバブルなので早晩崩壊する、とだいぶ以前から言われていますが、全然崩壊しないじゃないか、という声も聞かれます。2008年の世界金融危機の最中に中国は大規模な財政出動と金融緩和を実施し、2007年の引き締めから一転、不動産市場は一部でバブルとその崩壊が囁かれるようになりました。中国人民銀行が金融機関に貸出を増やすように指示しており、住宅ローン金利引き下げ、頭金比率の引き下げ、不動産開発企業の自己資本比率引き下げなどの政策を打ち出していました。つまり政府が意図的にバブルを生み出したようなものでした。

 それから10年以上を経て2020年からの「共同富裕」の下、コロナショックとともに不動産投資に対する規制(三条紅線)が敷かれ、いよいよ不動産市場に本格的にブレーキがかかり始めました。今回のように販売量、価格ともに広範に、そして長期にわたって下落するのは少なくとも私が中国に赴任した2007年以来初めてだと思います。

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 上海で住宅所有者が価格を下げてでも不動産を売却して現金に替えたいという動きについての記事を紹介します。ついに、上海でさえも、と思います。深圳は昔から価格の上下が激しく、暴落だ、と言っては翌年また上昇、を繰り返していました。上海、北京は三、四級都市で価格が下がっているときも安定していました。商業住宅市場の発展が他より早い、経済水準が高い、人口流入が続いていることなどがその理由に挙げられます。

 今は上海でさえも住宅価格は今後下がり続ける、と考える人が多くなってきたそうです。中原地産によれば、三月に10万件だった中古住宅の売り出しは四月には20万件になりました。

 売り手は10%から15%の割引を申し出ることも珍しくないそうですが、仮にファミリータイプで1500万元(約3億円)の物件なら150万元(約3000万円)の利益損失になります。しかし多くの不動産所有者は充分な投資利益を得ているため、10%割引したところで10倍のリターンが確保されています。(うらやましい)

 一方買い手としては様子見の態度になりますので、成約件数は三月の24,000件から四月は17,000件に急減し、五月もさらに15,300件に減っています。購買意欲減退は中国を脱出しようと考えている不動産所有者をがっかりさせ、なんとか買い手を見つけようとさらに大きな割引を申し出るケースもあります。やはり悪い循環に入っていきますね。

 中国経済がまだ絶頂期だった2012年、上海に住んでいた私は同じマンションの別の部屋のオーナーと話したことを鮮明に憶えています。日本の不動産バブルの話しをしたところ、この人は少し驚いたような表情で、しかしあまり現実感のない様子でこう言いました。「すぐに不動産を売らなければ。日本の過去の事例を教訓にしなければ」真剣にそう思っている様子はなく、どこか遠い別の世界のこと、という顔をしていました。あの人はあのマンションを売却したでしょうか、それともまだ保有しているでしょうか。

Be water, my friend.