水になるブログ

米国株を中心とした投資、料理、ゴルフの話題をお伝えします。

香港大手不動産デベロッパーの憂鬱(2) 棺桶住宅

 不動産、といえば中国本土では不動産デベロッパーの過剰債務、投機的売買抑制の話題が日を追うごとに増えてきている印象です。政府の掲げる「共同富裕」のスローガンと折り重なって、地方政府とともに巨額の収入を得てきた不動産業に大ナタがふるわれている形です。そして、住宅事情という点で本土と香港ではまったく異なります。

「ウサギ小屋」ならぬ「棺桶住宅」

 ともに2016年で異なる出所のデータですが住民ひとりあたりの住宅面積は本土の都市部が36平米に対して香港は13平米(!)と三倍近くの差があります。また、2019年のデータでは香港のマンションの平均占有面積はわずかに35平米です。2016年の本土都市部の一人分よりも狭いということになりますが、2013年にはまだ54平米あったのです。

 もともと決して十分なスペースがあったわけではなかった香港の住宅がさらに狭小化している背景には、深刻な理由があります。それは、止まることのない住宅価格の上昇です。米国のCBREのリポートによると2020年、香港は平均住宅価格(1億3500万円)が世界一高い都市になっています。

 中国本土では2016年の時点ですでに34億人分の住宅が開発されている、と言われていますが香港は慢性的に供給不足です。1990年代は年平均で27000戸だった住宅供給量は年々減少し、2010年代には年平均12000戸の水準になります。ひとつには90年代後半のアジア危機で住宅価格が急落し、以降、香港政府が住宅価格に非常に敏感になった結果、住宅用地の供給を制限していたことがあげられます。

 また、2003年には資本投資移民ビザ(Capital Investment Entrant Scheme)という制度が始まり、本土からの投資が増加することになります。もともと実需に対する供給が不足していることに加えて投資需要がさらに価格上昇に拍車をかけることになりました。

 そこで近年、不動産デベロッパーはマイクロアパートなる狭小住宅の開発、販売に力を入れるようになり、過去10年間で24平米以下の8550戸のマイクロアパートが建設されました。そこで「棺桶住宅」と揶揄されるようになったり、「駐車場より狭い」と言われるような狭小マンションが発売されるようになっているわけです。住宅の価格が上昇を続けた結果、面積を小さくすることによって販売価格を抑えることで市場のニーズに応える、というわけです。

(続く)

Be water, my friend.

junyan-1989.hatenablog.com