水になるブログ

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香港の最低賃金

  日本のひとりあたりGDPはついに韓国や台湾に追いつかれ、さらに追い抜かれる水準となっています。香港はすでに日本よりも高い水準にあります。円換算でのものの値段はたいてい東京と比べて1.5倍程度は高く、私のオフィスで働くみなさんの給与も、マネージャークラスだと月額HK$60,000(約100万円、このほかに賞与あり)くらいになり、ジュニアレベルだとHK$20,000(約34万円)といった水準です。

 ここでは最低賃金の問題が取り上げられています。香港はそもそも低税率、自由貿易を特徴とする資本サービス経済を発展させてきた経緯があり、すなわち「小さな政府」です。最低賃金の議論は社会福祉の観点から特に香港のような生い立ち、背景をもつ社会では特にややこしかろうと推察します。

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 最低賃金が二年ぶりに改定されましたが、その水準には少々驚いてしまいました。日本と比べてもかなり低い金額だからです。5月1日付で改定された(時間あたり)最低賃金はHK$40で、前回2019年に改定されたHK$37.5から6.7%の増加ということになります。USドル換算で$5.1、日本のUS$7.8と比べてもかなり差がありますし、韓国のUS$7.2、台湾のUS$5.7にも劣ります。

 これはどういうことか、というともう一つの比較で明らかです。香港、韓国、台湾の全労働者の月あたり賃金の中央値と最低賃金の比較をしています。最低と中央値の差が大きいほど賃金格差が大きいと言えるでしょう。香港が38%に対して韓国74%、台湾63%です。かなり大きな差です。さらに香港の時間当たり最低賃金は2011年はHK$28、月あたり賃金の中央値に対して44.8%だったので格差は時間とともにさらに大きくなったということです。

 現在の最低賃金水準は低すぎるのでさらに引き上げるべきだ、という声もありますが経済合理性や市場の需給によって決まるものだ、という市場原理主義も根強いのが香港らしいと思います。それが国際金融センター、国際物流都市として繁栄を築いた香港の原動力であり、アイデンティティということなのでしょう。国家安全法から世界における立ち位置が大きく変わりつつある香港にとって、最低賃金問題はこれまでとは違った角度から光が当てられるべきなのかもしれません。

Be water, my friend.