水になるブログ

米国株を中心とした投資、料理、ゴルフの話題をお伝えします。

中国の輸出がマイナスに

 アイリスオーヤマが一部の商品について生産を中国から日本へ移管するという記事を読んだ時、時の流れを感じずにはいられませんでした。国内生産に切り替える要因の一つに中国の人件費高騰が上げられていました。私が勤める会社は2000年から中国での生産を開始しました。当時、人事部門の責任者は当時の労務費で勤勉に働く現地の従業員を見て目を細めながら一方で日本の従業員に対して、その後進んでいくであろう社内における競争について危機感を示していたのを覚えています。

 中国からの生産を移転する理由はゼロコロナ政策に代表されるような一党独裁政権特有のリスク、純社会主義への回帰などから、先行きに対する不透明感が強まり、その結果生じるネガティブなセンチメントが大きな要因だと思います。あるとき突然に政策や法律が変わる、公共機関や電気などの利用が停止される、というのは以前からもありました。大きなイベントのために予約していたホテルが急にキャンセルされる、一時的に物流が止まる、今年から従業員を採用するときには有期雇用契約ができなくなる、などということはあったのですが、今起こっていることは比較にならないほど大きなスケールで、企業活動に与える影響は深刻です。

 海外に移転した生産拠点を再び国内に移転することを”reshoring”と言うのだそうです。経営コンサルティングファームのKearneyが報告している最新のReshoring Indexではアメリカのreshoringは2年連続で後退しています。しかしCovidー19、米中の貿易戦争、物流の混乱などを経て企業のマインドはより安定したロジスティックの確保をのため”the lowest cost”から”the best cost”へ戦略転換しているようです。メキシコや中南米、カナダを含む近隣諸国から材料や部品を調達し、最終組み立てを米国内で行う、といったより広義のreshoringが積極的に検討されています。

www.kearney.com

 米企業の中国依存の低下も明らかです。iPhoneのインド生産が今年5月から9月で1兆ドルを超えたと言われていますが、中国からアジア諸国への生産シフトが進み、工業品の輸入額に占める中国のシェアは2018年の66%から2021年には55%まで減少しています。中国が発表している統計によると、今年に入って貿易輸出5月から7月までは前年比で16%から18%の増と好調でしたが8月から鈍化し、最新の10月統計はついにマイナスとなりました。

Be water, my friend.