水になるブログ

米国株を中心とした投資、料理、ゴルフの話題をお伝えします。

先に払ったら負け? 爛尾楼と支払い拒否

 先に払ったら負け、は中国で生活する上での鉄則だと思ってました。明日はどうなるかわからない、という不確実性は一党独裁の共産党国家の特性だと思います。たとえば交通機関や公共施設を何の予告もなく使用禁止、封鎖してしまうのは今の感染防止策としての都市封鎖をみてもわかるとおり、この国のお家芸なのです。
 もっと身近なところでは商売が思わしくないので店をたたむ、ということも含めて、気に入って通っていたマッサージ店やレストランが突然閉店、撤去することがままあります。なので、回数券などのプリペイドによってディスカウント価格を提供するお店はよくあるのですが絶対に手を出しませんでした。
 日本でも中国でも住宅購入は一生に一度の買い物と言われるわけですが、一回の購入に対して年収の十倍あるいは何十倍もの金額を支払うのに頭金を払ってローン債務を抱えてしまうのはそもそも賭けです。中国の場合は特に、建築の仕上がり品質などもさることながら、住宅開発は何もないところから突然大規模に始める場合も少なくないので、商業施設などを含めた生活環境も実際にはどうなっているかわからないのに先に支払ってしまうのはどういうわけでしょうか。先に払ったら負け、の鉄則はここの皆さんの方が痛いほど身に染みていると思うのですが。
 中国ではマンション完成前に購入するのはあたりまえになっていますが、法律上は完成前に住宅ローン契約を結ぶことはできません。しかし地方政府はどんどん開発を促し、デベロッパーは借入によってどんどん開発し、購入者は価格が上がる前提でいち早く購入を決める、という循環が続き、銀行も当然これに加担しているわけです。この循環をストップさせたのは昨年政府が発した「三条紅線」と呼ばれる不動産融資規制です。これで逆回転が始まりました。
 建設が中断、放置された物件を「爛尾楼」と言いますが、もう十年以上も前からこの問題はあります。しかし今、この問題はかつてとは比べ物にならない広がりをみせています。7月に入って中国の各地で200件以上の住宅開発プロジェクトで購入者による住宅ローンと利子の支払い拒否が表明されています。銀行は債務返済の遅延や不履行に対しては個人信用評価に影響し、エアチケットや高速鉄道を利用できなくなったり子女の進学に影響するなどブラックリストに乗ることのリスクを喧伝しますが、購入者はもう背に腹は代えられないというわけです。ほかに選択肢はない、と。
 中国の銀行が抱えている住宅ローン残高は46兆元といいますので、GDPの半分程度にあたります。支払い拒否がさらに拡大していけば、中国の金融リスクは甚大で、政府はあわてて火消しにかかっています。うまく処理できるでしょうか。しばらく注目していきたいと思います。
Be water, my friend.