水になるブログ

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実践的な中国人

 中国でゼロコロナ政策が大幅に緩和されウイルスとの共生を選択したと報道されています。WHOのハリス報道官のコメントが紹介されています。

「非常に厳格な管理体制からの脱却はどの国にとっても非常に難しい」と指摘。課題は国民のワクチン接種を確実にし、病院の受け入れ態勢を整えることとし、「移行を維持するためには、地域社会や病院、国家レベルで多くの措置を講じる必要がある」と述べた。-12月14日ロイター

 今回の政策転換については背景に各地で同時多発的に発生している、国家主席を名指しした異例の抗議活動を鎮静化するというねらいがある、というのが大方の見方ではないでしょうか。ワクチン接種、病院の受け入れ態勢について特段の準備期間も行政に対する指示もないままある日突然に封鎖管理を解除した結果、人民のみなさんは混乱に陥っているようです。
 このことは、中国という国家、あるいは共産党が支配する社会のあり方と行動様式を如実に表していると思います。そこでは充分なコミュニケーションを通じて必要な手順を踏む、という我々があたりまえに思っている行動様式やそれを前提とした思考回路はありません。
 同じことがこれまで政治、外交、ビジネスの場面において意思決定と行動のスピードという点で中国の優れた面として光が当たっていたと思います。たとえば日本人、日本の企業は新しい事業投資を実行する前にはリスクや心配事を洗い出してそれらに対処する方法を検討したり最悪の場合の損失を見積ったり、そのための情報を集めて、(しかし多くの場合役に立つ情報が得られずに時間だけを費やす)あるいは逡巡して、とうとう砂漠に水を注ぐような小さなトライアルに踏み出して、しかし小さすぎて効果もわからないまままた時間だけを費やすか、または結局見送る、という行動様式が散見されます。ともすると、やりたいのかやりたくないのかよくわからないハナシになっていたりもします。
 一方、一部の中国人の企業家は共産党の権力者と結託して無人の野を行くが如く短時間でビジネスを拡大し、我々はそのスピード感に圧倒されます。こりゃかなわん。一般的に言っても中国人はあらかじめよく計画を練る、不測の事態に備える、いくつかの考えられる選択肢を比較検討する、あてにすべきリソースの利用可能性をよく確認する、というような事前準備に時間を費やしません。そんなことは無駄だからです。
 あてにしていた前提が変わるのは当たり前、予想もできない政策変更が突然発表されてしかも即実行されることも標準。その前提で事前の検討に時間を費やすことに意味がありますか?ということだと推測しています。一、二、三、まではだいたい想定どおり、四、五、でどうなるか?というのが日本人の感覚なら中国では一を踏み出したら二がわかる、あるいはいきなり五に飛べばいいという具合ではないでしょうか。
 よく言えば実践的、悪く言えば行き当たりばったり。身近なこと(たとえば買いものに行く、とか)でも動き出す前に前提や選択肢の確認について話していると、「あなたはなにがほしいですか」と単刀直入に聞かれることがあったりして、思考回路や価値観の違いが浮き彫りになることがあります。

 中国人と仕事をしていると、予測不能なことがしばしば起こる、という経験を持っている日本人は多いと思います。こちらのみなさんはあらかじめ想定していないことが発生したことに対してあらかじめ想定していない方法で対処するからです。しかしこの人たちはこの人たちで、ある日突然降ってくる予測不可能な政策変更に翻弄されているわけで、それが個人の思考回路や行動様式を醸成する元になっているのでしょう。歴史的に、ですね。
Be water, my friend.