水になるブログ

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香港に来る中国旅行者 経済的利害と悪感情

  訪日外国人旅行者数は当初2020年に予定されていた東京五輪に向けて2019年についに2000万人に達しました。奇しくも東京五輪の年、さあいよいよ今年、というときに武漢発の感染症が世界中に拡大した、まさにその直前でした。10月11日から入国制限が大幅に緩和され、未曽有の円安と相まって今後の旅行者数の増加が期待されているところでしょう。
 2019年の訪日香港人旅行者数は過去最高の229万人を記録しています。人口700万人としておよそ三分の一、これだけの比率で訪日する国や都市がほかにあるんでしょうか。日本政府観光局の観光白書によると2019年の国別訪日旅行者数で上位は一位 中国(959万人)、二位 韓国(558万人)、三位 台湾(489万人)で、人口比では台湾が約20%でこれも高い比率ですがやはり香港の比率がダントツのようです。ちなみに旅行者数の順位では台湾に次ぐ四位になっています。
 その香港ですが、Hong Kong Tourism Boardの統計によると香港への旅行者は2018年が最大で6500万人、翌年の2019年に大規模な反政府活動による暴動があったため、5600万人に減少しています。そしてこの6500万人の地域別内訳をみると、なんと5100万人が中国本土からの旅行者が占めています。香港は9月から入国制限が”0+3”に緩和されましたが、+3は「待機三日間」を意味し、外出はできるもののレストラン等への入店を含む行動制限があるので旅行を目的に香港に行こう、という人にとってはまだハードルが高いと言えます。ましてや中国本土からの旅行者にとっては帰ったあとの制限が厳しいため、この超大口顧客が帰ってくるのを期待するのは当分先になるのではないでしょうか。
 本土からの旅行者については既存の香港市民との摩擦、相互に対する悪感情が根深く横たわっているようです。5100万人の旅行者、と言ってもその実際の行動、目的は実利的なものが多く見受けられ、自分と将来の子供のために香港に居住する権利を得る目的(つまり香港人の夫を探すということ?)であったり、単純に乳幼児用のミルクをまとめ買いするためであったり、並行輸入のための仕入れのためであったりします。

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 総じて言えば香港経済にとってプラスになるとは思うのですが、個々人からすれば自分の生活領域に影響が及ぶ事象に直接触れると嫌悪感につながるのも理解できます。さまざまな場面、ショッピングや観光に限らず病院などの公共施設を含めて混雑が発生します。商店などの家賃が上がったり、両替商に鞍替えしたりします。香港の公共でのモラルや行動習慣は日本のそれと非常に近く、たとえば携帯電話にがなり立てる、歩行中にぶつかっても知らんふり、列に並ばない、ということはあまり見られません。そこで彼の地からやってきた人々が普通に電車の中でモノを食べ始めたり、道端で子供に小便をさせたり、という光景に遭遇すると、耐え難い、ということになります。
 一国二制度、と言いますが何十年、あるいは百年以上の期間に渡って別々の親に育てられた別々の家庭のようなものですから、お互い相容れない価値観があります。香港からみれば、消費や資金の流入ということもそうですが、人材流出や出生率の低下による人口減少のリスクをオフセットしてくれる無尽蔵の人口ATMがあるようなもので、大きなupsideだと思います。一方、本土の人には郷に入っては郷に従えで、公共での振る舞いは改善してほしいと思います。無理かな?いや、できると思います。
Be water, friend.