水になるブログ

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中国の結婚事情(2) 薄れる婚姻動機

 経済発展とともに女性の経済的自立がすすんだ結果、晩婚化、婚姻率の減少が発生するのは日本や他の国でも経験している社会の変化だと思います。中国の研究者がその因果関係を指摘しています。

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 2021年、最新の政府統計によると20歳から34歳の女性のうち52.7%が大学を卒業しています。共産主義青年団の調査では都市部に住む18歳から26歳の独身女性のうち、43.9%が結婚の意思がないか、少なくとも結婚するかどうかわからない、と回答しています。この回答率は同じ質問をした独身男性の同様の回答率を19.3%も上回っているのです。

 また、家庭内暴力や家庭や職場での女性の地位の低さを心配する女性が近年、多くなっているそうです。中国の女性は少なくとも職場では、少なくとも日本と比べて男と対等に扱われている、と認識しています。江蘇省の徐州市で発覚した非人間的な事例は以前からあるにしても、これは特殊ケースとして、家庭内暴力の事例については全く不見識でした。私はどちらかというと、上海の夫の家庭内での地位を憂いておりましたので。

 「ねそべり族」と呼ばれるライフスタイル(?)がよく聞かれるようになりました。労働受給逼迫、996(9時から9時まで週6日勤務)に代表される労働強化、かと思えばIT業界や教育業界など政策による大量の雇用整理発生など大学を卒業した若者にとって社会環境はますます過酷になっています。右肩上がりが続いた経済のスローダウンとともに、社会が一休みを必要としていると感じられてしかたがありません。

 離婚についてはどうでしょうか。中国の男にとって結婚=住宅購入が条件です。ご案内のとおり中国の不動産価格は年収の20倍、30倍といわれる水準まで高騰しました。一生を住宅ローンの奴隷になる覚悟をして結婚、しかしなんらかの理由によって離婚という事例を目の当たりにすれば、価値観になんらかの影響を与えるのは当然だと思います。主要国の離婚率をみると中国の離婚率の上昇は際だっています。婚姻法による離婚の制約が緩和された2003年から最近まで一貫して上昇を続けており、ついに米国を抜いて主要国で最大の離婚率に達しています。そもそもこの期間に他の主要国は一様に離婚率が下落しています。(なお、直近では「結婚冷静期」導入によって離婚率が大きく減少したとの報道もあります。)

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 ある米国の中国人研究者によるとコロナウイルスの感染拡大も婚姻数減少に影響を与えています。2020年には51万件、2021年には34万件の婚姻機会が失われたとしており、およそ4%から5%のインパクトになります。

 人口減少、出生数の減少は政府も問題視しており、だからこそ一人っ子政策を転換して、2021年には三人まで認める法案が可決されました。一党独裁による共産主義国家は婚姻や出生を指示、計画するでしょうか。一人っ子政策の時代は二人目の子供を役所で登録するにはお金を払う必要がありました。今度は、独身を続けたり、結婚しても子供を三人以上登録しないと罰金を払わなければならないようになるでしょうか。「上に政策あれば下に対策あり」、偽装結婚パックや産婦人科ぐるみのレンタル赤ちゃんなど、官民双方の珍妙なアイディアに期待したいと思います。

(終わり)

Be water, my friend.