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香港 違法集会スキャンダル(2) 反腐敗の腐敗

 腐敗、役人の汚職は中国本土では文化と言ってもよいほどの風習、習慣です。秦の始皇帝がこの広大な大陸を統一したときも、地方の行政官に給料はなく、管轄の行政区から税金を回収し、中央へ納める分のほかに自分の取り分を徴収する、という方式ですから背景としては筋金入りです。このへんが3000年の歴史の厚みです。ちなみに古代エジプトの徴税役人は厳しく管理され、私腹のために規定以上の徴税を課した役人は鼻を切り落とされたと言います。

 香港は違います。途中でお父さんがイギリス人になったので、躾が違います。そして、北京の「お父ちゃん」の年収は13万6620元(2015年人民日報)ですが、キャリー林行政長官の報酬は468万9600香港ドルです(2020年)。欧米の元首と同等か、むしろ上回る水準の年収です。政府の報酬制度は汚職の温床となる役得や特権を前提にはしていないわけです。

 1974年、英国統治下の香港はIndependent Commission Against Corruption(ICAC、反腐敗独立委員会)を設置しました。汚職の摘発は大陸では政治目的でしかありませんが、香港のICACは本来の目的に沿って活動し、効果を上げていると思います。香港はお金の扱いに対しては神経質なところがありますし、法令遵守の意識も高いと思います。私のやっているような商売は、デベロッパーから受注をして回収するのですが、入札のプロセスや請求・支払いの手続きなど、非常に高い透明性、公平性が保たれていると感じます。大陸とは大違いです。

 しかし、この度やらかしてしまった感染防止に関する法律に抵触した疑いのある誕生パーティにはICACの長官も参加していて世間を驚かせました。このパーティには200名近くの参加者があったと言われ、その中には合計20名の政府の役人と議員が含まれていました。行政長官はこの事件が起こった1月3日から4日後の1月7日に13人の政府関係者を対象とした捜査を実施したと発表しましたが、この中にICACのSimon Peh長官の名前があったのです。彼らは香港ディズニーランドのとなりにあるPenny Bar Campと呼ばれる検疫隔離施設にマイクロバスで連行されました。

 Simon長官は1月5日に、国連の関連組織であるInternational Association of Anti-Corruption Authorities(IAACA、国際協会反腐敗組織)の重要ポストへの選出が決まったという記事がありました。北京と香港の両政府の承認のもとでこのポストへ立候補することが先月にはすでに公表されていました。

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 この組織も例によってトップ層に中共から人選されており、果たしてどれだけの実質的価値がある活動なのかわかりませんが、Peh氏にとっては少なくとも対面的に箔がつくポジションだったのではないかと思います。辞退、のような展開になるのかはわかりませんが注目していきたいと思います。おそらく自分から身を引くようなことはしないと思いますけど。

(続く)

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