水になるブログ

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中国 国家の安全と身の危険

 中国のデータセキュリティ法は6月10日の全人代で可決・成立し、9月1日から施行されることになりました。しかし北京政府がデータセキュリティ法を侵害している疑いがあるとして滴滴に対する調査を発表したのは同社がNYに上場した直後、7月2日でした。

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  • 中国の法律による国家安全の定義は曖昧で、データセキュリティ法はなんにでも適用できる
  • サイバーセキュリティ法、個人情報保護法と併せて使用することによって、国内外を問わずいかなる企業も完全に遵守することが不可能な内容になっている

 いくつかの似たような法律を矢継ぎ早に成立させ、成立から一ヶ月で施行させている背景を想像するに、そんなに焦っているのか、と思ってしまいます。

 共産党幹部にとって政治的に致命傷となるような個人情報が米国に流出する事例などがまことしやかに伝えられていますので、日常、冷や汗をかくような事例には事欠かないのでしょう。一刻も早く蛇口と出口をとめなければ、そんな焦りを感じます。

 もちろん、技術的、軍事的にcriticalな情報の流出を防ぐという理由もあるでしょうが、個人に関する醜聞や秘密は本人にとってはそれ以上にcriticalなのだと思います。。

 江沢民の長男である江綿恒が牛耳っていたIT、通信の分野、曽慶紅が管理管轄していた香港、これらは現勢力にとっては非常に危険なインフラストラクチャです。香港国家安全法制定について、大陸にとっても一国二制度を有名無実化することで国債金融・貿易ハブとしての価値を毀損する意味があるのか、という意見があったと思います。しかし当事者にとっては目の前に迫る脅威を無効化することが最優先なのだと思います。

 彼らにとっての危険とは民主化思想とか、言論の自由とか、そういうことではなく、もっと切実な具体的なことだと思います。だから香港にもいざとなれば手を下せるよう、法律を制定しました。

 2015年の国家安全法の施行から、サイバーセキュリティ法、香港国家安全法、今年に入ってデータセキュリティ法、個人情報保護法、とこれでもか、とばかりに現政権のリスク対策がとられていますが、枕を高くして眠れる日は来るのでしょうか。

 

Be water, my friend.

 

《参考:セキュリティに関連する中国の法案》

  • The National Security Law of the PRC(中国国家安全法、2015年7月1日施行)
  • Cybersecurity Law(サイバーセキュリティ法、2017年6月1日施行)
  • Hong Kong National Security Law(香港国家安全法、2020年6月30日施行)
  • Data Security Law(データセキュリティ法、2021年9月1日施行)
  • Personal Information Protection Law(個人情報保護法、2021年9月1日施行)