恒大社の債務不履行問題は取引先、つまり同社が販売する開発プロジェクトの建設を支える下請け企業、資材納入業者に波及し、関連する企業、社員、家族の数を考えるとその及ぼす影響は計り知れません。また香港を含む中国全土で開発を行ってきた同社なので、当然、その取引先の数もさることながら地域的な広がりも中国全土に及ぶわけです。
今回の記事にあるとおり、不動産と建築など関連業界の経済活動はGDPの約30%を占めており、仮に不動産で20%の減少となれば全体の5%から10%の影響を与えることになります。
また個人的には中国駐在時代に話題に上った金蟷螂（Gold Mantis）や索菲亜（SuoFeiYa）が売掛金回収の立場で被害者の会に名前を連ねていることを知り、感慨を覚えました。
金蟷螂は当時中国では唯一といってよい、中国全土で設計施工サービスを展開できる内装業者で、我々のような立場からすると協業、提携などを検討する対象でした。今から思えばここを販売チャネルにできないかと考えいたこともあり、実現していたら今頃連鎖的に影響を受けていることになるでしょう。
索菲亜は当時流行りだした全屋定制（オーダーメイド内装一式サービス）や家具、厨房を販売するブランドとして台湾出身の国際女優、スー・チーをイメージに起用していたのが印象的でした。
ちなみにスー・チーは北海道を舞台に大ヒットした中国映画「狙った恋の落とし方」のヒロイン役や日本でもコカ・コーラの烏龍茶「煌」のCMでご存じ方もおられると思います。
今回の記事では業者が拡散した借用証書の画像や仕入れ先とそれに対する買掛金リストも公開されており、臨場感があります。
- 6月末で6670億元（1000億US$）の買掛金があり、そのうち90%が12ヶ月以内の支払い期日
- 最近香港の事例が報道されたように、販売手数料やシーメンスの冷蔵庫などが含まれる
- このほか同社はCAB(Commercial Acceptence Bills、IOU、つまり借用証書と同様）なるものを発行している
- これは2020年末で2067億元（311億US$）に及び、ある仕入れ先の業者はこの借用証書に対する返済に対して恒大からなんの反応もないことからソーシャルメディアにそのコピーを投稿した
- 6月から8月27日の間に恒大は自社の不動産を買掛金清算目的で仕入れ業者や建築業社に252億元相当販売した
- 最大の仕入先の一つである蘇州のGold Mantis（中国最大の内装業者）はこの方法で返済期限の過ぎたCABに対して17億元を清算した
- 6月末時点のGold Mantisの恒大に対する売掛金は41億元残っており、このうち6000万元は支払期限が過ぎている
- オーダーメイド家具のSuofeiya Home Collectionは1億6000万元の売掛金清算の手段として恒大との合弁会社の40%を取得した
- 江蘇省の塗装・断熱工事業者のLinは広東省の物件の完成した2つの住戸1000万元相当を支払いの一部として譲り受けた
- Linは「受け取りよりほかない。商売を継続するために資金が必要だ。年末までに所有権証明書を取得して早期に現金化したい。」と言う
- 不動産売買のプロであるCentaline（中原地産）は約1200万US$の仲介手数料の支払い請求に対して提訴している
- 同社の創業者施永青は仲介手数料支払いの手段として恒大が不動産の譲渡を提案しているが、恒大が清算されてしまえが筆頭所有者として権利を主張できるか不明であると言う
- また施は、「ほしいのは現金だ。」、もし不動産を受領すれば印紙税や諸々の租税公課負担が発生するからだ
Be water, my friend.
おまけ：恒大の仕入れ先、下請け業者の買掛金残高リスト
