昨夜の米国市場はダウ工業平均、S&P500、ナスダック総合指数ともに下げました。ダウ工業平均とS&P500は二日連続の下げになります。雇用と企業業績の先行き不安を反映したものだと思いますが、このへんで一休みと思っている投資家も多いのではないでしょうか。私もslowdownは歓迎です。
突然ですがAT&Tについての記事をご紹介します。AT&Tといえば、グラハム・ベルが興したアメリカの伝統的大企業、しかし近年はパっとしないイメージしかありません。独占体制解体の結果、スプリント、ベライゾンなど新興企業との競争にさらされており、2020年度の税前利益は△29億ドルの赤字、株価もこの5年間で2/3に下がりました。
安定して高い配当が投資家にとっての魅力だったAT&T社で、実は私も同じ理由で購入しています。パっとしない同社ですが、今後の展望についてこの記事では3つの買い理由と1つの売り理由を述べています。高配当株がなぜ高配当なのかがよくわかる同社の実情です。
ポジティブな3つの理由は単純明快に説得力がある一方、ひとつの理由の方も非常に本質的な問題を指摘しています。
AT&T株は買い、の3つの理由
1.新生AT&T始動
- そもそも同社の株価が市場をunderperformしている理由は三つ
①ベライゾン、T-モバイルとの激烈な市場競争
②有料TVストリーミングサービス事業の赤字
③その赤字を止めるべく借り入れを増やして実行したディレクTVとタイムワーナーの買収によって引き起こされたさらなる問題
- 8月にはディレクTVを分離、タイムワーナーはディスカバリー社との合弁を通じて2022年に設立する新会社に分離
- 5Gネットワークを強化、拡張し、T-モバイルに追いつく
(T-モバイルは昨年4月にスプリントを吸収合併して無線キャリア事業でAT&Tを抜いている)
- AT&Tは"新生"AT&Tが2022-2024の期間にEBIDTA、株価収益率で5,6%の年平均成長率を達成すると見込んでいる
2.配当より成長重視
- 配当へのキャッシュ割り当ては2020年の150億ドルから80億ドルに減少する
- このことは現在の予想配当利回り7.6%が3%から4%に減少することを意味する
- タイムワーナーの分離後、ワーナー/ディスカバリーはネットフィリックスやディズニーとのストリーミング競争に互するためコンテンツへの投資を必要とする
- 配当ねらいの投資家にとっては悪いニュースと思われるが、実際AT&Tは今後も他の優良株企業よりも高い配当性向を保つはずである
- ワーナー/ディスカバリーはAT&T社の配当よりも新しいコンテンツ開発に投資するため、両者ともに長期の成長により重点をおくことになる
3.株価の過小評価
- AT&Tの株価はEPS(一株あたり当期純利益)の9倍以下、ベライゾンは10倍、T-モバイルは39倍
- 弱含みの見方は現在の株価は過去の手ひどい失敗をおり込んでいるし、業績改善プランの行く手は険しいというものだ
- しかし事実として同社は最悪の状態をすでに脱している
- コロナ感染によるユーザーの5Gへの切り替えの遅れから回復し、ディレクTVとタイムワーナー買収の失敗を軌道修正している
- さらに他にもノンコア事業を売却し、財務体質を改善している
AT&Tは売り、のひとつの理由
- 新生AT&Tは依然としてジョン・スタンキーによって率いられる
- ジョン・スタンキーは当時AT&TエンターテイメントのCEOとしてディレクTVの統合を見過ごし、タイムワーナーを買収する失策を主導したその人である
- ディスカバリーのCEOであるデヴィット・ザスラフは新生ワーナー・メディアを指揮するが、彼が2007年からディスカバリーを率いて以来、ストリーミング事業の拡張は全く順調ではなかった
- ということで2つの負け組事業をいっしょにしても勝ち組になるはずがなく、がらくたを取り除いたAT&Tも依然としてベライゾンやT-モバイルに追いつくのは茨の道である