ますます露出が増え、飛ぶ鳥を落とす勢いの恒大集団です。
中国は経済発展を遂げる過程で、日本が経験したバブル経済とその崩壊を研究して同じ轍を踏まないようにしてきたと言われています。しかし少なくとも見た目には、我々にとってはいつか来た道と映ってしかたがありません。チューリップ・バブルや南海泡沫事件から今にいたるまで、産業技術やテクノロジーがいくら進化しても人間の欲と浅はかさが普遍だということなんでしょうか。
過剰流動性、土地神話、不動産価格高騰、マンションブーム、総量規制、貸し渋り、中国は今歩んでいる道とどこが違うのでしょう。
Bloombergの最新記事から、中国政府にとっての頭痛の種を3つの切り口からご紹介します。
1.社会不安
- マンション購入者による建設中断に対する抗議
- 理財商品の償還不履行に対する抗議、本社深センだけでなく他の地域でも同様の抗議活動が発生、動画が拡散される
- マンション販売における6月末時点の引き渡し前の契約残は総額で2020億ドル、およそ140万戸に上る
- 同社がもし在庫のたたき売り(早期の資金化のため)をすれば不動産価格に深刻な下落を引き起こす
- 中国の資産運用は社会的な安全性や投資方法の多様性の面で未熟なため、不動産は唯一魅力的な投資対象と信じられている
- このため不動産は家計資産の40%を占め、中国の人々にとっては住宅価格は高騰するよりも、むしろ下落するほうが好ましくない
- 同社が販売している理財商品は今後400億元(およそ6800億円)が償還期限を迎える
- 同社は電気自動車事業を含む資産売却によって資金化を図るが、進捗は芳しくない
2.資本市場
- 恒大集団は中国企業として最大の高利回り債権発行主体だ
- 同社が倒産すれば、中国企業のジャンク債デフォルト発生率は3%から14%に跳ね上がる
- 中国企業のドル建てジャンク債の利回りは2月の7.4%から14%近くまで上昇している
- 中国本国での危機感は高まっているが、すでにクレジット商品市場の規模は12兆ドルだ
- 恒大が倒産すれば銀行は社債の保有を減らし、市場の流動性は硬直化し、そのような信用危機に陥れば、政府や中央銀行は規制を発令せざるを得ない
- 不動産に対する銀行の貸し渋りが起こり、ローンの焦げ付き増加を招く
- 恒大や他の弱小デベロッパーに融資をしている小規模な銀行にとってはローン返済不履行が深刻に増加することになる
3.経済への影響
- 恒大の懸念は折しも中国経済の停滞と時期的に重なっている
- 徹底した政府主導のCovid-19の感染防止策によって小売業や観光業の収益は傷み、不動産価格抑制策は経済に大きなインパクトを与えている
- 8月の住宅販売は金額ベースで昨年比20%減少した
- 政府は「共同富裕」政策や過度なリスクの抑止を重視しており、不動産取引抑制がすぐに緩和されることは考えにくい
- 来年は不動産部門が経済成長の強い足かせになり、もしかすると経済成長率を維持する目的で不動産取引に対する抑制策は緩和されるかもしれない中国の不動産市場調整は国内の景気停滞だけでなく海外にも影響をおよぼす
- 中国経済の20%から25%を占める不動産建設が長期に停滞すれば、GDP成長率や商品需要の低下を招き、世界的にインフレ抑制効果をおよぼす可能性がある
Be water, my friend.